福島県伊達郡桑折町。
町のあちらこちらには、初夏になると緑の灌木が広がります。
中国では古来、邪気を払う仙木とされた桃の木です。
桑折町は、桃の出荷量全国第2位の福島県下でも桃の産地として名高く、旬も間近になると園内には、ほのかに甘い香りが漂ってきます。
冬の剪定、春の摘蕾、そして摘果などの作業を経て1年間大切に育ててきた桃の実をそっともぐ瞬間は、思わず「この子」と呼びたくなるほどです。
長年のお客様に桃を召し上がっていただいた時、「しあわせじゃーー。」とのお言葉をいただいたことがあります。
1年の苦労が報われたような、私どもにとっても至福の一言でした。
そんな当園で心を込めて育てた桃を、皆様にもお届けしたく
思います。
広大な果樹園で、時折不思議な物体を見かけることがあります。これは性フェロモン剤という害虫の交尾を抑制する仕掛けです。
雌の性フェロモンをプラスチック製の携帯ストラップ状のヒモに染み込ませて下げておくことで、匂いに惹かれてやってきた雄は、雌不在の果樹園で繁殖を果たせません。
モモシンクイ、リンゴコカクモンハマキなど、桃に大打撃を与える害虫を農薬なしで退散させる方法です。
当園は平成14年、県に認証されたエコファーマーで、それ以前から有機堆肥の利用をはじめ、こうした防虫策など安全で持続性の高い生産方式を実践してきました。
桃に限らず、果樹園と虫には長きに渡る格闘の歴史があります。常に安心な果実の提供を志すため研究を怠る日はなく、同時に「桃は旬が短く値段も高いと思われがちですが、多くの魅力を知って欲しい」との一念で、新品種の栽培にも果敢に挑戦中です。
せん孔細菌病は、雨や風で傷ついた枝から感染した細菌が引き起こす桃特有の病気です。
蔓延すると、葉、そして実へと穴を開け、商品価値がなくなってしまいます。
消毒や枝葉の切除など、できる限りの対策を講じていますがこれといった特効薬はなく、農家を悩ませています。
斑点があらわれた桃は見た目がよくありませんが、皮をむいてしまえばその味に何ら変わりはありませんし、健康に被害が出ることは一切ありません。
しかし、出荷するのには見た目や色づきが大変重要なので、程度の悪いものは正規品として出荷することはできず、当園では「ちょい悪桃」としてお求めやすい価格で販売させていただいております。
桃の食べ頃/冷やすのは、食する2時間程前に
表面の産毛は、雨水などの水分を弾いたり、繊細な中身を保護するためのものです。密生していることが鮮度の目安ですので、ちくっとした感触を確かめください。
食べ頃は天候によって若干変わりますが、【宅配便到着直後の固め、また2、3日後の柔らかめ】、どちらも好みで美味に食せます。ちなみに桃にはざっと50種類があり、緻密な実や溶質な実など食感や風味も多彩で、手で皮を剥ける桃がベストという先入観をくつがえす、奥深い世界が隠されています。
冷やすのは、食する2時間ほど前がおすすめ。冷やしすぎると、せっかくの桃の甘みを感じにくくなります。
あいはら果樹園が「あんぽ柿」に使用する柿の種類は、「蜂屋(はちや)柿」です。全体的に丸く先端がちょっととがった形をしていて、種があります。蜂屋柿は、あんぽ柿の定番品種です。
柿の収穫には「絶体絶命!」の場面も。ず~っと昔から取らせてもらっている、町内のお寺にあるたかーい柿の木。はしごが倒れて、2~3mの高さで宙ぶらりんに。なんとか無事に飛び降りましたが、冷や汗が吹き出し震えがきました。
乾燥させる時のひもをくくりつけるために、柿の首木(しゅもく)をT字に切り、大きさ別に分けます。ひとつひとつ、傷をつけないように慎重に行います。この作業、とっても骨が折れます。しかも、柿は何百個と・・・。気が遠くなります。
全自動の皮剥き機で皮を剥きます。
柿を置くだけで自動でへたを取り、皮を剥いてくれます。
もし、剥き残しがあれば、ピーラーで剥きます。
あんぽ柿作りも中盤です。皮を剥いた柿は、黄硫でいぶして殺菌します。その後、干場(乾燥用の小屋)に皮を剥いて黄硫くん蒸した柿を並べて干します。
期間は、約1ヶ月ほど。じっくりと乾燥が進み、旨味と甘みが凝縮されていきます。オレンジに輝く柿がずらりと並びます。最後に、遠赤外線を応用した「柿えもん」で、乾燥の仕上げをします。遠赤外線による乾燥で室内は30度に設定。庫内の湿気を強制的に排出することで湿度は20%以下になります。
いい具合に乾燥が進みました。
完成まで約1ヶ月半。おいしくできました。どうぞご賞味ください。